ルソー |
抜粋文
|
エミール(中) |
私たちの情念の源、ほかのすべての情念の初めにあって、そのもとになるもの、人間が生まれるとともに生まれ、生きている間は決してなくならないただ一つの情念、それは自分に対する愛だ。 |
|
人間を本質的に善良にするのは、多くの欲望をもたないこと、そして自分をあまり他人に比べてみないことだ。 |
|
人間よ、人間を辱めてはいけない。 |
|
教師よ、言葉少な目にするがいい。しかし、場所、時間、人物を選ぶことを学ぶがいい。そしてあなたの教訓をすべて実例によって与えるのだ。 |
|
人の心はつなぎとめようとすれば離れてゆき、自由にしておけばつなぎとめられる。 |
|
彼を大人としてとりあつかえる時期がくるまでは、彼のあなた方に対する義務ということを問題にしてはいけない。ただ自分自身に対する義務を問題にすべきだ。 |
|
そうだ。人間は一つのものではない。私はあるものを願いながらも願ってはいない。私は自分が同時に奴隷でもあり、自由でもあると感じている。私はよいことを知っているし、それを好んでもいる。しかも私は悪いことをしている。私は理性に耳を傾けているときは能動的だが、情念にひきづられているときは受動的だ。そして、私が屈服するとき、なによりも耐えがたい苦しみは、自分は抵抗することもできたのだ、と感じていることだ。 |
|
あらゆる行動の根源は自由な存在者の意志にある。 |
|
人間は、能動的で自由であるなら、自分から行動する。 |
|
よき若者よ、まじめで、真実であれ。しかし、傲慢な心をもつな。無知でいられるようになるがいい。そうすればあなたは、あなた自身もほかの人もだますようなことはしまい。 |
|
人間にとって大切なことはこの地上における自分の義務を果たすことだ。そして人は自分を忘れているときにこそ、自分のために働いているのだ。 |
|
人は自分がつくりだすイメージを、それをあてはめる対象よりも、はるかに愛している。愛している人を正確に、あるがままに見たとすれば、地上に恋などというものはなくなるだろう。 |
|
幻想のヴェールが落ちると、恋は消えうせる。 |
|
官能が目覚めさせられるのはいつも想像によってだ。 |
|
勝負事にたいする趣味は、貪欲と退屈の結果で、空虚な心にだけ根をおろす。 |