文学名言集 |
芥川龍之介 |
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芋 粥 | 人間は、時として、満たすか満たされるか、わからない欲望のために、一生をささげてしまう。その愚を笑うものは、畢竟、人生に対する路傍の人にすぎない。 |
偸 盗 | 都も昔の都でもなければ、自分も昔の自分ではない。 こうして人間は、いつまでも同じことを繰り返してゆくのであろう。そう思えば都も昔の都なら、自分も昔の自分である。 |
死ぬとは、何だ。なんにしても自分は死にたくない。が、死ぬ。虫のように、なんの造作もなく死んでしまう。 | |
人間について | 人間的な、余りに人間的なものは、大抵は確かに動物的である。 |
われわれ人間の特色は神の決して犯さない過失を犯すということである。 | |
経験 経験ばかりにたよるのは消化力を考えずに食い物ばかりにたよるものである。同時にまた経験を徒にしない能力ばかりにたよるのもやはり食物を考えずに消化力ばかりにたよるものである。 | |
女の顔 女は情熱に駆られると、不思議にも少女らしい顔をするものである。もっともその情熱なるものはパラソルに対する情熱でも差し支えない。 | |
袈裟と盛遠 | げに人間の心こそ、無明の闇も異ならね、ただ煩悩の火と燃えて、消ゆるばかりぞ命なる。 |
ある阿呆の一生 | 彼女の顔はこういう昼にも月の光の中にいるようであった。 彼女の顔はこういうときにも月の光の中にいるようであった。 |