文学名言集


        

太宰 治
抜粋文
如是我聞  民主主義の本質は、それは人によっていろいろ言えるだろうが、私は、「人間は人間に服従しない」あるいは、「人間は人間を征服できない、つまり、家来にすることができない」それが民主主義の発祥の思想だとかんがえている。
     は、女のように容易には怒らず、そうして優しいものである。 
      いのちがけで事を行うのは罪なりや。そうして、手を抜いてごまかして、安楽な家庭生活を目ざして仕事をするのは善なりや。
     真の正義とは、親分も無し、子分も無し、そうして自分も弱くて、何処かに収容されてしまう姿において認められる。
     最後に問う。弱さ苦悩は罪なりや。
     わびしさ。それは、貴重な心の糧だ。しかし、そのわびしさだが、ただ自分と家庭とだけつながっている時には、はたから見て、頗るみにくいものである。
     ためになる。
 それがなんだ。おいしいものを、所謂「ために」ならなくても、味わわなければ、何処に私たちの生きている証拠があるのだろう。
     勉強がわるくないのだ。勉強の自負がわるいのだ。
     人生とは − 私は確信をもって、それだけは言えるのであるが、苦しい場所である。
かすかな声
 だまされる人よりも、だます人のほうが、数十倍くるしいさ。地獄に落ちるのだからね。
     不平を言うな。だまって信じて、ついて行け。オアシスありと人の言う。
     甘さを軽蔑することくらい容易な業はない。そして人は、案外、甘さの中に生きている。他人の甘さを嘲笑しながら、自分の甘さを美徳のように考えたがる。
     自己弁解は、敗北の前兆である。いや、すでに敗北の姿である。
     議論とは、往々にして妥協したい情熱である。
もの思う葦  ゆく水は二度とかえらぬそうだ。生成流転という言葉もある。この世に生まれてきたのがそもそも、間違いの発端と知るべし。
     うつしみに きみのえがきし をとめのえ 
                  うらふりしけふ こころわびしき
右、春の花と秋の紅葉といづれ美しきという問題にて。よみ人しらず。
      健康とは、満足せる豚。眠たげなポチ。